茶道、または「茶の湯」は日本特有の文化で、その起源は平安時代まで遡ります。当初は中国から伝来した仏教の修行僧たちが、長時間の座禅を絶えず行うためにお茶を飲む習慣を取り入れました。この習慣が宮廷や公家たちに広まり、茶会という形で楽しまれるようになりました。
鎌倉時代に入ると、禅僧による茶の湯の流れが強まり、単にお茶を飲むという行為以上のものへと進化していきました。それは、精神的な統一や禅的な覚醒を追求する行為であり、禅宗と深く結びついていました。この時代に生まれたのが「抹茶」で、一般的に茶道で使われるお茶として知られています。
室町時代に入ると、お茶と禅の関係はさらに深まり、有力な武将や公家たちによって広く実践されるようになりました。この時期にはじめて茶の湯の礼儀や作法が体系化され、また茶席での調度品についても定められました。このことから、この時代を茶の湯の「成立期」と呼ぶこともあります。
一方、16世紀の戦国時代になると、茶の湯は武士たちの間で大いに流行し、「茶の湯合戦」とも称されるほどの競争が展開されました。この時代、三好長慶や織田信長、豊臣秀吉といった大名たちは、政治的な地位を強化する手段として茶の湯を利用しました。
そして、茶道が最も洗練された形を見せるのが、千利休の時代です。千利休は、「和敬清寂」の精神を基に、独自の茶の湯の世界を築きました。それは極めて簡素でありながら深い味わいを持ち、人間の心のあり方を示すものでした。
以後、茶道は江戸時代から現代に至るまで、時代や社会状況の変遷を経ながらも、その基本的な精神や形式を保ちつつ継承されてきました。